鍛冶の神「天目一箇神(あめのまひとつのかみ)」は、『播磨国風土記』では天目一命(あめのまひとつのみこと)という記述で登場し、『古事記』では「天津麻羅(あまつまら)」という名前で天岩戸開きにも登場している。天岩戸開きでは、岩窟の中に立てこもってしまった天照大御神を何とかして出てもらおうと、神々がそれぞれの役割を決めるが、その中で天目一箇神が鍛冶職を担ったとされている。(『古語拾遺』にも同様の記述がある)また『日本書紀』では、国譲りをした大物主神をまつる祭具をつくったとき「天目一箇神」が鍛冶を担当したと言われる。
「天目一箇神」の「目一箇」(まひとつ)は「一つ目」を表し、鍛冶師が鉄の温度を見るのに片目をつぶって見ていたことや、鍛冶師が鉄を打つ際に火の粉を受けて目を失明するということからも「一つ目」は鍛冶職人の象徴とされている。
このような歴史的背景を受けて、鍛冶師が作る播鍛を同じ播州にある、鍛冶の神「天目一箇神(あめのまひとつのかみ)」を祀る「天目一神社」(兵庫県西脇市)にて『播鍛/BANKA』をご使用いただく皆様のますますの繁栄と包丁の使い方の上達、そしていつまでも皆様に愛される一丁であり続けることを祈願し奉納させていただきました。
播鍛 奉納札。
柳刃先丸包丁。
奉納式を開始。
修祓の儀。
祝詞奏上。
玉串奉奠儀。
二礼二拍一礼。
三徳包丁。
奉納式終了。
日野地区は、加古川の支流杉原川が作った沖積平野と段丘上に拓けた地域です。この地に人々が生活しはじめたのは古く、縄文時代後期(約4,000年前)の土器が発見されています。弥生時代(約2,300年前)になって稲作が伝わると、さらに開拓は進み、多くの集落跡が見つかっています。奈良時代(8世紀)には、託賀郡都麻里に含まれましたが、平安時代の中頃(10世紀)には、杉原川東岸地域は資母郷、西岸地域は那珂郷と呼ばれるようになりました。このころの開拓の様子を示す、条里という一辺109mの正方形の土地区画跡が道路や水路に残されています。
平安時代後期から室町時代(12〜14世紀)にかけては、東岸地域は這田荘、西岸地域は安田荘という荘園に含まれていたらしいのですが、戦国時代(15〜16世紀)には富田荘というひとつの荘園になり、それぞれ富田郷、野中郷と呼ばれ、野間城(八千代町)に本拠を置く在田氏の支配かにありました。その後、豊臣氏の蔵入地を経て江戸時代には各村ごとに分割支配が行われましたが、大木、野中、市原、前島などの村々は姫路藩領、幕府領、古河藩領と移り変わりました。
明治時代になって廃藩置県が行われ、明治9年にほぼ現在の兵庫県になりました。日野という地名は、明治22年の野村制の施行により10ヵ村が合弁した時に、鎮守の春日神社の日と平野神社の野をとって日野と名づけたものです。
大木町に鎮座する天目一神社の祭神は天目一命で天久斯比止都命ともいいます。神話によれば、天照大神が弟の素盞男命の乱暴に怒って天岩戸に隠れた時、岩戸を開くための祭りに使用する刃物や鉄鈴を作ったのが天目一命でした。それ以来、鍛冶の神、ふいごの神として崇拝されるようになったといわれています。また、天目一命は、奈良時代の『播磨国風土記』の託賀郡の条にも登場し、多可郡の地が古代から鍛冶に関する高度な技術をもっていたことも考えられるのです。して、平安時代の927年にできた『延喜式』という書物には「延喜式内社」と呼ぶ、全国で重要とされた神社が記載されていますが、その中の多可六座のひとつにこの天目一神社が含まれているのです。
明治維新の神仏分離令により、多可都内でも延喜式内社への関心が高まり、特に所在地が不明であった天目一神社については、多可郡内の数ヵ村の神社が名のりを上げました。ところが、著名な学者が式内社天目一神社の所在地を大木町に推定し、当時の多可神職会もこの説を支持するにいたり、地元大木町でも当時惣堂天王社のあったこの地を式内社天目一神社の跡地と定めて、その復興を計画したのです。
社殿は地元をはじめ、播州や泉州の金物業者の援助を得て、大正8年に着工、大正12年に竣工し、鎮守である平野神社も平野山東山麓から移して合祀しました。竣工した本殿は神明造とよばれる特殊な形式を採用し、しかも近在では例を見ないほど大きく立派なものです。また、鳥居も本殿にあわせて神明鳥居が作られています。
竣工以来、天目一神社は復興された式内社として有名になり、近在の鍛冶職人、金属加工職人たちの信仰を集めました。(旧暦)11月8日(現在は(新暦)12月第1日曜日)に行われる「ふいご祭り」には播磨をはじめ遠く丹波、但馬、美作、和泉からも参詣者があり、強風が吹くほど、ふいごの風が強くなると喜ばれました。
戦後は金属工業などの機械化により、参詣者は減りましたが、現在でも熱心な信者と地元大木町の努力によって、盛大にふいご祭りが行われています。
平成6年(1994年) 10月 吉日 奉納有志一同
天目一神社
〒677-0001 兵庫県西脇市大木町648
祭神:天目一箇神(あめのまひとつのかみ、製鉄・鍛冶の神、ふいごの神)
合祀の平野神社祭神:大雀命(おおさざきのみこと、16代仁徳天皇)、日本武尊、天穂日命。
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